この「戦闘機パイロットの空戦哲学」を読み始めた瞬間、今までのファイターパイロットのイメージが崩壊しました。
今までは、トップガンやマクロスなどのパイロットと同じイメージを持っていましたが、むしろ実際はそれとは正反対でした。
この本は、パイロット物の小説やマンガを描くのに、非常に参考になります。
今回は、この本の見所やどういう方におすすめかを説明していきたいと思います。
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この本を読んでファイターパイロットのイメージが変わった
この本を読む以前は、トップガンやマクロスの様なバリバリのドックファイターこそが真のエースパイロットだと思っていました。
しかし、実際はその逆でいかにドッグファイトになる前に勝負を決めるかが、真のエースだと知りました。
つまり、エンターテイメントの花形であるドッグファイトは戦術的に愚策であると言うわけです。
戦闘機パイロットの空戦哲学の特徴と内容
本のサイズは、ライトノベルサイズで厚みはかなり薄いです。
※本の価値は、厚みだと勘違いしている方がいらっしゃると思いますが、そうとは限りません。厚みがある本もどうでもいい無駄な記述でページ数を稼いでいるのもあります。
服部省吾氏とは
昭和14年、旧満州国奉天市生まれ、昭和37年より平成5年まで航空自衛隊の戦闘機パイロットとして飛行隊長などを歴任。総飛行時間4200時間。
平成5年に退官後は防衛庁防衛研究所戦史部勤務、主任研究官(外国戦史研究班長)を勤める。
著書に「操縦のはなし」(技報堂出版)、「戦闘機の戦い方」(PHP)、があり、また特攻隊の研究論文などを国内外で多数発表している。
※著書「戦闘機パイロットの空戦哲学」から抜粋
歴代のエースパイロットが目白押し
この本には、生涯任務中に部下を一人も死なせなかった(すみません、未帰還者がいたみたいです)坂井三郎氏や史上最高の撃墜数をたたき出したドイツのエーリッヒ・ハルトマン氏など第一次、第二次大戦の歴代のエースパイロットを通じて、エースパイロットの条件や人間性などを説明しています。
トップガンやマクロスはあまり参考にはならない?
トップガン
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1986年公開のトムクルーズ主演の不朽の名作。
この作品での戦い方は古く、ベトナム戦争辺りの戦い方になります。
1986年にもなれば、ミサイルの性能が向上して、遠距離からのミサイルでの攻撃が主な戦闘方法になります。
確かにこの作品登場するF-14トムキャットは、運動性能ではF-15の性能を凌駕する最強の戦闘機です。
しかし、本来は高性能のレーダーを使用しアウトレンジからフェニックスミサイルで航空機を攻撃することを得意とします。
配備当初からエンジンとの相性が悪く、墜落ばかりしていたので、運動性能は優れているのに皮肉にもドッグファイトには不向きの機体です(後F-110エンジンで改善されます)。
※この作品でも、エンジントラブルで、墜落するエピソードが描かれています。
超時空要塞マクロス
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1982年放送のロボットアニメ。この作品に登場するバトロイドバルキリーは、戦闘機からガウォーク、人型のバトロイドの三段変形するのが特徴。
この作品は特に、ドッグファイトが誇張されている印象が見られる。
エンターテイメントとして、ドッグファイトは外せないのかもしれませんが、一般の視聴者が空中戦=ドッグファイトでも、作家が視聴者レベルでは厳しいと思います。
トップガンにしろマクロスにしろ、制作サイドは「空中戦はドッグファイトだけでは無い」と理解した上でなく、かなり熟知した上で制作しております。
あと、双方ともエンターテイメント性としては力作なので、この機会に見てみるのもいいかもしれません。
なぜドッグファイトが愚策なのか
なぜドッグファイトが愚策なのかをリストと、解説を踏まえて説明いたします。
愚策の理由
- 撃墜されるリスクが増える
- 機体を痛める
- 燃料消費が激しい
撃墜されるリスクが増える
ドッグファイトの名前の起源は、犬がケンカする際に互いに相手のしっぽを追いかける様子に似ている事からそう呼ばれるようになった(日本語では巴戦)。
つまりは、同じ空域をグルグル回っていることになります。そのため、パイロットはターゲット以外の視界が失われます。
第三者の目線からすると格好の的になります。同じ空域をグルグル回っている事は、ヘリがホバーリングし空中で停止しているのと同じことで、そこに、スパローやAMRAAMなどの射程の長いミサイルを撃たれるとほぼ確実に撃墜されます。
機体を痛める
ドッグファイトは、相手の後ろに自機を持って行かなければならないので、パイロットにもかなりの負荷が掛かります。
パイロットに負荷が掛かると言うことは、機体にも負荷が掛かります。
台風の時、傘が風で破壊されるのと同じイメージです。
ドッグファイトは、整備士泣かせとなります。
燃料消費が激しい
ドッグファイトは、急加速、急減速、急旋回の連続で、空気抵抗も半端なく受けます。燃費が悪くなるのは当然です。
ドッグファイトは現実に起きている
しかし、「ドッグファイトは愚策」と言うのは理論上の話で、実際にドッグファイトは行われています。
ロシアや中国、北朝鮮の領空侵犯の恐れのある機体が戦闘機なら自ずと、ドッグファイトに発展します。
このときのドッグファイトは、お互いそれなりの意味があります。
侵犯機側は、相手国の機体性能とパイロットの技量。
防衛側は、相手の機体性能と技量以外に任務遂行の妨害、時間稼ぎ、燃料の消費などの目的があります。
この本の見所
この本には、パイロットの実像をかなり踏み込んで書かれています。
エースパイロットは凡人で努力と精神力が優れている
凡人?エースパイロットもタダの人です。
努力と精神力と精神論に聞こえますが、結局この事につきるようです。
あと、臨機応変も付け加えておきます。
六割脳
六割脳をご存じですか。六割脳とは、航空機を操縦する時地上で立っている時の六割しか能力を発揮出来ないと言う意味です。
これは、人間の体質によるもので、なぜ能力が低下するのかは具体的には分かっていません。
初めてこれを言った人は不明で、坂井三郎氏が予科練時代にはすでに使われていたので、100年近く前にはすでに存在していたことになります。
この本には、六割脳の記述はありませんが、それに似た内容の記述がされています。
その他
あと、上記で記した以外にも。パイロットと血液型の関係などたくさん興味深い内容が書かれています。
新書は過去の著書のガイドブック的な存在
この本も新書のジャンルに入ります(新書と言っても10年前の本ですけど……)。
新書には、様々なジャンルがあり、難しい書籍を分かりやすく解説したものもあります。
この新書を読むことで知らなかった書籍を知る事もできます。
この本で注意すべき点
おすすめしておいて何ですが、ここで注意点をまとめておきます。
内容が古い
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ここに書かれているのは、著者の服部省吾氏の現役時代の内容で機体も半世紀前に活躍したF-86Fセイバーです。
現在では、使われていない用語や内容も含まれているおそれがあります。
現在の情報を知る場合は、最新の情報が書かれた内容の書籍も読むことをおすすめします。
戦闘機パイロットの空戦哲学―トップガンの素顔 (光人社NF文庫) |
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まとめ
この本は、私にとってかなり衝撃的で、空中戦=ドッグファイトではないと知った著書でもあります。
たしかに、内容は古いのですがここまで、パイロットの内面を掘り下げた本はありません。
パイロットの内面に関しては、今も昔もあまり変わらないかと思います。
SFであれ何であれ、作品でパイロットの事を描く際には、この一冊は一読しておいた方がいいと思います。
この本を読むことで坂井三郎氏の「大空のサムライ」という書籍の存在を知りました。
この本もおすすめしたい書籍なので、いずれ紹介して行きたいとおもいます。
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